出光興産(株)の木藤俊一代表取締役社長の年頭挨拶は次の通り。
新年おめでとうございます。
本年は令和2年、干支でいうと庚子(かのえね)の年となります。「庚(かのえ)」と「子(ね)」の関係は相生(あいおい)で、共に育つという意味があり、それがあわさった庚子(かのえね)は、「新たな芽吹きと繁栄が始まる年」と言われています。今年はオリンピックイヤーでもあり、統合2年目を迎えた当社にとっても、またステークホルダーの皆様にとっても、記憶に残る素晴らしい年となることを心から願っています。
まず、昨年の当社のトピックスを時系列で振り返ってみます。
4月1日に統合新社がスタートし、同日、出光昭和シェルの第一期生となる新入社員181名の入社式が行われました。彼ら彼女らが、既に同じ方向を見つめ、希望に満ち溢れている姿を見て、皆が一日も早く出身母体への拘りを捨て、未来に向けて共に進んでいかなければならないと改めて決意いたしました。
5月には、当社が出資しているベトナムの太陽光発電所が完工いたしました。エネルギー事業を主体とする当社にとって、気候変動問題は重要かつ喫緊の課題です。再生可能エネルギーの開発に積極的に関わ り、2030年までに累計5GW、うち4GWを海外で開発する予定です。一方、海外ばかりではなく、続けて徳山事業所における木質バイオマス発電の事業化を決定しました。2022年度内に営業を開始し10万世帯分の電力を供給していきます。
6月には、中国2カ所目となる潤滑油の製造工場を恵州に起工することを発表しました。高機能材事業は当社の成長ドライバーとしての役割が期待されていますが、中でも潤滑油部門はシェルルブリカンツジャパンと共に牽引役を担っています。
6月にはフィリピンで、11月にはパキスタンで販売会社の営業を開始し、インドネシア2カ所目の潤滑油製造工場も新設するなど次々に手を打っています。
8月には、岐阜県飛騨市・高山市で超小型EVを活用したMaaS事業の実証を開始しました。今後10年で国内石油製品需要は3割減少する見込みですが、私はこれ以上SSを減らしてはならないと考えています。全国約6,500カ所のSSネットワークを活かすために、新しいサービス、ビジネスモデルを提案していきます。
9月には1989年の設立以来、石油・天然ガス資源事業を行ってきた出光ペトロリアムノルゲが30周年を迎え、ノルウェー・日本両国の政府関係者やビジネスパートナーらと記念式典を行いました。エネルギー省の幹部やオスロ市長らと話をする中で、30年間石油開発事業にとどまらず、ムンク美術館の復興支援など、地元に寄り添った活動を地道に行ってきたことで、強固な信頼関係が構築されたことを再認識しました。先人達の足跡に敬意を表するとともに、当社として大事にしてかなければならないものは何か、改めて気づかされま した。
11月には、当社のオンリーワン技術であるSPSの第2製造装置をマレーシアで建設することを決定しました。機能化学品事業の領域・規模拡大が当社の成長戦略上極めて重要であり、今後はM&A等にも積極的に取り組んでいきます。一昨年の11月に商業運転を開始したベトナムニソン製油所においては、初めてのシャットダウンメンテナンスを実施し、稼働後にみえてきた不具合を徹底して修繕しました。今年はフル稼働を継続し、生産の安定、コスト適正化による収益改善を図ります。
以上は、当社の社員が、それぞれの持ち場で自らのエンジンで動く、まさに「人が中心の経営」が実践されている証です。国内外を問わず、全ての事業の根幹にあるのは「人の力」です。事業を通じて人が育っていれば、これから先どんな環境変化があってもそれを乗り越えることができます。「人は、無限のエネルギー。」というスローガンは、人の力を信じ大切にしてきた長い歴史がある当社だからこそ掲げたスローガンです。
もう一点、昨年を振り返る上で、忘れてはならないのは災害への対応です。昨年も想定外の大型台風が発生する等、多くの自然災害に見舞われました。企業としてのリスク対応の必要性が改めて問われています。日本のエネルギーセキュリティを支え、国民のライフラインを守るという我々の使命を果たすために、今一度対策について再点検していく必要があると思っています。
さて、本年は昨年11月に公表した統合新社として初の中期経営計画がスタートします。大きく3点申し上げたいと思います。
まず第一に、国内外の政治・経済動向は極めて不透明な状況が続くということを覚悟しなければなりません。米中貿易摩擦に端を発する世界的な景気減速は、残念ながら長期化すると見ています。年初には米国によるイラン司令官の殺害というニュースが飛び込んできました。我々がなすべきことは、中東情勢の緊迫化にしっかりと対応しつつ、景気回復、市況改善等の外的要因に頼らず、目標達成に向けて、コスト削減等、自力でできることはすべて行うということです。中期経営計画の発射台となる2019年度を含め、あらゆる角度から業務を分析し、目標達成に向けて最善を尽くしていきます。
第二に、中期経営計画の重点方針で掲げた、成長事業の加速や次世代事業の創出、デジタル変革の推進を具体的に進めることです。すでに、Next事業室、デジタル変革室等いくつかの新しい組織を立ち上げました。これらの部署はコーポレート部門として社外と接点を持ちつつ社内横断的な活動を展開していきますが、次世代事業やデジタル変革への挑戦は、一部の専門部署だけのものではなく、当社グループ全体で取り組み、全ての部署が直接的、間接的に関わっていくものです。私は、すべての事業、すべての部室、すべての従業員が主役であり脇役はないと思っています。当社グループ内のあちらこちらに自然発生的に新しい挑戦が始まることを大いに期待しています。
第三は、経営層と社員の直接対話の充実です。昨年12月より本社地区にて中期経営計画を基に社員との意見交換会をスタートさせました。今後は各地で開催していきます。
2020年度内には、本社機能を新しい本社ビルに集約し、システムを含めた業務プロセスの統一と刷新も図ります。業務プロセスやシステムだけでなく、オフィス空間のありたい姿についても検討し、今後本社だけでなく、各オフィスにも展開して働き方改革の一助としていく予定です。
統合2年目となる本年は、助走期間も終わり、真の意味での統合を成し遂げていかなければなりません。何を変え、何を変えないか、皆で喧々囂々侃々諤々の議論をし、次の企業体に進化していきます。
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【年頭挨拶】出光興産の木藤俊一社長
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