大王製紙(株)は、セルロースナノファイバー(CNF)の事業化に向けた取り組みとして、軽くて強い特性を活かした樹脂との複合化技術の開発に取り組んできた。検討を進める中で、樹脂補強においてはCNFまで微細化するのではなく、粗く解したセルロース繊維を用いることにより樹脂の力学物性を向上できる技術の開発に成功した。この知見を基盤として、セルロース繊維とポリプロピレン樹脂を複合化した「セルロース複合樹脂ペレット」のサンプルを11月より供給開始する。
1.「セルロース複合樹脂ペレット」の特徴
・同社独自技術により、樹脂中でのセルロース繊維の分散性、なじみ易さを改善し、複合樹脂の力学物性はポリプロピレン樹脂の1.3~2.1倍
・用途に応じた繊維サイズに調整できる同社CNF製造技術を活かし、樹脂補強に適する粗く解したセルロース繊維を使用
・既存の樹脂加工設備で容易に取り扱いできる樹脂ペレット状の供給形態
・セルロース繊維、添加剤を樹脂と複合化したシンプルな品質設計による高いコスト競争力
2.サンプル供給について
2018年11月より供給開始予定。供給量、価格は相談に応じる。
3.「セルロース複合樹脂ペレット」開発の経緯
同社は、2013年からCNF水分散液のサンプル提供を開始し、2016年にはCNF事業化に向けた課題である製造コストの低減を目的に、省エネルギー型CNF製造プロセス開発のためのパイロットプラント(年間100トン)を同社三島工場内で稼働させ、用途に適応したコスト競争力のあるCNF製造技術の開発を進めている。
さらに、CNFユーザーの関心度が非常に高い用途である樹脂との複合化においては、水分を抑えたCNFが欲しいというニーズの実現を目指して、2017年12月にCNF乾燥体のパイロットプラント(年間10トン)を水分散液プラントに併設し、本年1月から乾燥粉末形態でのサンプル提供を開始した。
樹脂と複合化し易いCNF乾燥体による用途開発を進める一方で、セルロース繊維と樹脂との複合化に関して、樹脂へのセルロース繊維の分散性を高めたり、樹脂とのなじみ易さを改善する技術についても同社独自に開発を進めてきた。
この度、これらの開発成果、ならびに同社省エネルギー型CNF水分散液製造プロセスの特徴である用途に応じて繊維サイズを調整できる技術を基盤として、高い力学物性値を示すセルロース繊維とポリプロピレン樹脂と複合化した「セルロース複合樹脂ペレット」の開発に成功した。セルロース素材の樹脂材料への用途展開を加速させるため、11月よりサンプル供給を開始し、事業化に向けた取組みをさらに強化していく。
4.セルロース複合樹脂ペレットの性能(同社での試験例)
・組成:ポリプロピレン、セルロース(10%)、その他添加剤
・力学特性:曲げ弾性率2.5GPa(汎用ポリプロピレンの1.3~2.1倍)
※上記数値は測定値の1例であり、品質を保証するものではない。