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【ゲリラ豪雨予測】情報通信研究機構、地デジ放送波を使った水蒸気量推定手法開発

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 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)電磁波研究所 リモートセンシング研究室の川村誠治主任研究員らの研究チームは、地デジ放送波の伝搬時間の変化を高精度(ピコ秒精度; 10-12秒)に測定することで、水蒸気量を推定する手法を提案し、ソフトウェア無線の技術を使って開発した測定装置を用いて、水蒸気量推定に成功した。この水蒸気量推定の観測値を天気予報の数値予報モデルに取り入れて解析を進めることで、ゲリラ豪雨など都市部の局所的な気象現象の予測精度向上に寄与できると期待される。今後は、関東地域を中心に実利用に向けての実証実験を進めていく予定。この成果は、米国の専門誌「Radio Science」に、日本時間3月8日(水)23時に掲載された。
 NICTでは、ゲリラ豪雨など局所的で激しい気象現象に対する防災・減災を目指し、フェーズドアレイ気象レーダなど雨を観測する技術の研究開発を進めている。一方、雨の元である水蒸気(レーダでは見えない水)は、気象予報にとって非常に重要だが、広い範囲にわたって効果的に観測する手法が限られているのが現状。
SnapCrab NoName 2017 3 9 15 28 12 No 00 R 電波は、大気中の水蒸気量によって伝わる速度が変化するため、その変化量を精密に測定することで、水蒸気量を知ることができる。今回、地デジ放送波の遅延プロファイルの位相から電波の伝搬遅延を求める手法を開発した。測定される位相には放送局や受信側の局部発振器の位相雑音も含まれるが、これらの影響を相殺する手法を考案し、高精度の伝搬遅延測定に成功した。ソフトウェア無線の技術を用いて、小型で安価なリアルタイム測定装置を開発。さらに、実観測において、地上気象観測結果と整合し、かつ、より細かい変動をとらえた水蒸気量観測結果を得ることができた。このシステムは、地デジ放送波を受信するだけで計測が可能であり、新たな送信機などは不要。しかも、時間分解能が高く、実利用でも1秒~30秒程度ごとに水蒸気量を観測することが可能。
 従来使われているGPS/GNSS可降水量やマイクロ波放射計などを利用した水蒸気量観測は、いずれも鉛直方向に水蒸気を観測するものだが、今回開発した手法は、最も水蒸気の多い地表付近を水平方向に観測するため、鉛直方向の観測を補って気象予報の精度向上に寄与することが期待される。
 今回の研究成果は、NICT電磁波研究所のリモートセンシング研究室のレーダ技術、電磁環境研究室の放送技術及び時空標準研究室の周波数同期技術など、研究分野の異なる技術を連携させることによって実現した。
 今後は、本手法の精度検証や気象予報の精度向上への寄与度合いの調査などを進めていく。今回開発したシステムは、現在研究開発を実施中の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)・レジリエントな防災・減災機能の強化」の研究課題において関東域に多地点展開され、今後2年間にわたって実証実験が行われる計画。


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