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【Printronics】宇部興産と山形大学・時任教授のグループ、印刷有機集積回路に適用可能なN型有機半導体で「半導体・オブ・ザ・イヤー2017」グランプリ獲得

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 宇部興産(株)山形大学有機エレクトロニクス研究センターの時任静士卓越研究教授のグループが共同で開発した、印刷有機集積回路に適用可能なN型有機半導体が、電子デバイス産業新聞主催の「半導体・オブ・ザ・イヤー2017」の半導体用電子材料部門グランプリを受賞した。6月7日14時から、東京ビッグサイトで開催中のJPCA Show 2017(第47回国際電子回路産業展)会場で行われる表彰式で、時任卓越研究教授がプレゼンテーションを行う。
 半導体・オブ・ザ・イヤーは、(株)産業タイムズ社発行の「電子デバイス産業新聞」が主催。最先端の産業を支える半導体製品・技術の表彰を通じて技術や市場の発展に寄与することを目的に1994年から毎年開催されている。過去1年間に発表された製品や技術が選考対象となり、斬新性、量産体制の構築、社会に与えたインパクト、将来性などを基準に記者投票が行われる。
 宇部興産と山形大学が共同開発したN型有機半導体は、P型有機半導体に劣らない特性を実現したことの斬新さや、既に販売可能なレベルであること、今後期待されるプリンタブルエレクトロニクス市場拡大へ向けての将来性が評価され、同部門にノミネートされた31件の中からグランプリに選出された。
 今回受賞した技術は、山形大学時任卓越研究教授グループと宇部興産が2011年から行っている共同研究の成果(関連特許出願済)。
 半導体はP型半導体とN型半導体を組み合わせることで低消費電力な相補型(CMOS)回路を構成することができ、集積回路にはこれら2種の半導体が使われている。これまで、有機溶媒に溶かすことで印刷プロセスに適用可能で、かつ実用的な移動度*1 を示すP型有機半導体は数多く開発されてきたが、高性能なN型有機半導体はほとんど報告がなかった。これは、N型有機半導体が大気中の水や酸素に対して化学的に弱く、長期間にわたって高い性能を維持することが難しかったため。
 宇部興産と山形大学が開発した新しいN型有機半導体は、既存のP型有機半導体材料と同程度の性能を持っており、印刷型CMOS回路の高性能化に大きく貢献する技術。CMOS回路はデバイスの省電力化と小型化には必須の技術であり、またこれを高度に集積することで、IoT(Internet of Things)やウェアラブルセンシングで注目されるセンサやRF-IDタグ、ディスプレイなどの電子デバイスを製造することが可能。
 現在、山形大学時任卓越研究教授のグループなどで、この材料を用いた有機集積回路の試作と機能実証、ならびに印刷による有機デバイス製造のプロセス検討を進めている。これまでにCMOS回路をはじめ、いくつかの集積回路の試作と機能実証に成功し、学会や論文で成果を発表している。さらにこれらの技術を応用して、センサやRF-IDタグ、ディスプレイなどの電子デバイスの実証検討が進められている。
 このような有機デバイスの市場開発を推進するために、宇部興産は山形大学発のベンチャーである(株)フューチャーインク(社長:時任静士、以下「フューチャーインク」)との間で、この材料に関するライセンス契約を締結し、2017年4月にフューチャーインクからこの材料の販売を開始した。この販売開始を機に有機デバイス開発をより広いユーザーに検討していただくことで、実用化への流れを一層加速する。

*1 移動度
 半導体中での電荷の移動のしやすさを示す量で、数値が大きい程、大電流を流せる、信号を速く切り替えることができるため高性能になる。たとえば液晶ディスプレイの場合、移動度の高い半導体を使用したほうが画面上で動きを滑らかに表現することができる。


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