(株)ダイセルは、同社の連結子会社であるポリプラスチックス(株)の発行済株式のうちCelanese Corporation(以下、セラニーズ)が子会社を通じて保有する全株式を取得する旨の契約を締結し、完全子会社とした。
1.背景及び目的
ポリプラスチックスは、1964年にセラニーズとの合弁で設立されて以来、日本のエンジニアリングプラスチックの草分けとして、自動車産業や電機産業、精密機械など、様々な顧客の要望に応え、高機能製品とテクニカルソリューションを提供することで成長を続けてきた。金属に代わる加工性の高い新素材として登場したエンジニアリングプラスチックは、人々の暮らしの高度化とともに、その需要が増加し、ポリプラスチックスも、その専業メーカーとして製品のバリエーションや供給能力を増強しながら顧客に最適なソリューションを提供し、日本やアジアでのNo.1はもとより、一部主要製品においては、世界トップシェアを占めるエンプラメーカーとなっている。
一方、同社は、人類初の熱可塑性プラスチックであるセルロイドのメーカー8社の合併によって創立して以来、セルロース化学、有機合成化学、火薬工学などを駆使し、総合化学メーカーへと発展しており、100周年となる今日、新長期ビジョン、中期戦略を策定し、新たなバリューチェーンの構築を目指している。
その間、セラニーズとは、当該事業のみならず、酢酸、酢酸セルロース、アセテートトウなどよく似た事業構造を持つ企業として、ポリプラスチックス設立以前からの良好な関係の下、相互に協力して同社の発展を支えるパートナーシップを継続してきた。ただ、激しく変化するビジネス環境の中で、時には知的財産をめぐる係争が生じたり、ポリプラスチックスのさらなる成長をめぐる意見の相違が生じたりする場面もあったが、昨年来、信頼と敬意に基づくトップ同士の対話を通じて、こうした諸課題の解決を模索し、この度の合意に到達した。
この合意により、同社グループとしてのエンジニアリングプラスチック事業、並びにその周辺領域の事業のさらなる成長を目指していく。
2.ポリプラスチックス完全子会社化の効果
同社の新しい中期戦略においては、「原ダイセル(Operation-1)」として既存事業の構造改革や新事 業の育成強化、アセットライトによる経営効率の向上に取り組むとともに、次の成長への基盤となる「新 ダイセル(Operation-2)」実現に向けた事業再編や既存合弁事業の抜本的な見直しによるさらなる価値 創造力の強化を進めており、今回の取得はその最も重要な取り組みの一つとなる。
ポリプラスチックスの完全子会社化により、エンジニアリングプラスチック事業を中核として、同社連 結売上高の 4 割を占める(2020 年 3 月期)合成樹脂分野の事業再編を加速し、グループ内にある様々な製 品群のシナジー効果の最大化を追求できるようになる。
また、昨年 10 月に実施した同社のコーポレート改革にポリプラスチックスの改革を一体として進めていくことで、共通原料の調達や人財の交流など、間接部門の業務効率、資産効率の最大化を図る。
さらに、5G や電気自動車、電子材料など、エンジニアリングプラスチックの成長領域は、同社の価値提 供型ビジネスユニットが注力する市場と共通しており、新事業開発におけるシナジー効果も追及していく。
3.同社グループとしての成長戦略
同社の100%子会社となることで、ポリプラスチックス独自の成長戦略を新たに策定し、アジア市場に おける基盤のさらなる強化、欧米市場での事業展開のためのプラットフォームの強化に取り組み、既存製 品群の販売数量の拡大を図る。
また、同社グループ内でのシナジーだけでなく、同社グループのサプライチェーン、バリューチェーン をベースとした新たなアライアンスも可能となり、エンジニアリングプラスチックのトップメーカーとし ての基盤をさらに強化していく。
これらの戦略推進を通じて、「新企業集団(Operation-3)」、すなわち垂直・水平両方向のバリュー チェーンの構築に取り組み、様々なパートナー企業との共創によって、より大きな価値を社会に提供する とともに、同社グループの継続的な企業価値の向上、成長を目指す。