(株)神戸製鋼所は、従来にない抗菌技術として各種分野への適用を進めている高機能抗菌めっき技術「KENIFINETM(ケニファイン)」を応用し、ケニファインの新たな利用技術として、透明性と抗菌性を兼備した透明性ケニファインの成膜技術を開発した。
今回開発した成膜技術により、プラスチックフィルム、紙シート、フレキシブルガラス、布繊維、金属箔などのフィルム状の対象物の表面にケニファインの極薄膜を形成し、透明性と抗菌性を具備させることが可能となり、より幅広い用途への利用が想定される。 今後、高砂製作所にあるロールコータのデモ設備で実証を重ね、フィルム状の対象物への抗菌性付与のビジネス展開を模索していく。
なお、同社は4月5日(水)~7日(金)に東京ビッグサイトで開催される第8回高機能フィルム展に出展し、透明性ケニファインフィルムのポスターおよびロール状サンプル、 ケニファインめっきサンプルなどを展示する。
(1)透明性ケニファイン成膜技術について
同社は2008年頃より、ケニファインの新たな利用技術として、近年ニーズが高まりつつある、透明性と抗菌性が求められるフィルム状の製品(薬品や食品包装用の材料、窓材、スマートフォンやパソコン用タッチパネルなどのフィルム状部材など)への適用技術の開発を行ってきた。 今回開発した成膜技術は、ロールツーロールスパッタリング※1によりケニファインを薄膜化してフィルム上に成膜する技術。形成されるケニファイン薄膜の厚さはナノメーターレベルでありながら、従来のケニファインめっき処理と同等の抗菌効果を有している(図1、図2参照)。 この技術により、成膜の対象となるフィルム状の製品に対して外観を損ねることなく、抗菌性を付与することが可能となり、ケニファインの適用分野が大きく広がる。今後、ユーザー評価を進めて、ロールコータ装置販売やライセンスなどのビジネス展開を見極めていく。
※ ※1 ロールツーロールスパッタリング ターゲット材(基板に成膜したい物質を板状にしたもの)の表面に、アルゴンや窒素を衝突させて、成膜したい物質の粒子を空間中に取り出し、連続的に巻出し/巻取りされるフィルム状の基板の上に粒子を堆積させ、薄膜を形成すること。
抗菌性確認例
1.PETフィルムに載せた黄色ブドウ球菌10,000個の24時間後の個数
ケニファイン無し:約4,000個、ケニファイン有り:2個以下
ケニファイン薄膜がない場合に比べて、ケニファイン薄膜により0.05%以下に抑制
2.PETフィルムに載せた大腸菌10,000個の24時間後の個数
ケニファイン無し:約1,100,000個、ケニファイン有り:2個以下
ケニファイン薄膜がない場合に比べて、ケニファイン薄膜により0.0002%以下に抑制
【一般財団法人ボーケン品質評価機構 2016年9月26日発行 試験No.20216039462-1】
JIS Z 2801:2010 フィルム密着法
透明性確認例
PETフィルム(ケニファイン無し):90.27%、PETフィルム(ケニファイン有り):88.21%
透明性にほとんど差異がない。
(2)ケニファインとは
同社材料研究所が独自に開発した高機能ニッケル系合金めっき技術で、めっきラインを有するメーカーへめっき技術を供与するビジネス形態をとっています。 1996年7月に大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157による大規模集団食中毒事件を機に、その対策技術として開発がスタートした。2001年に開発を完了し、2002年よりライセンシーにて量産を開始しました。現在のライセンシーは12社にのぼる。
■抗菌、抗かび、抗ウイルス効果等
・従来抗菌材比で、滅菌スピード10倍以上、かび生育の抑制作用50倍以上
・防藻性、水周りのヌメリ抑制
・SARS系コロナウイルス、A型インフルエンザウイルスなどのウイルス抑制
・サケマス魚卵のミズカビ抑制
■適用事例
・産業用途:食品・飲食工場や医療・福祉機器、家電・エアコン部品、養殖用金網など
・民生用途:台所・浴室用品、グルーミンググッズ、健康用具、アミューズメント製品、衣料品、畳など
(3)これまで確立してきたケニファインの利用技術
■抗菌めっき処理技術
・標準仕様(ケニファインまま)
・高機能兼備タイプ(クロム仕様、ゴールド仕様、特殊シルバー仕様)
■抗菌アルマイト処理技術
■抗菌粉末とその利用技術
・塗料・スプレーへの混合、インクへの混合による印刷加工、樹脂製品などへ練り込み